
目が痒いことに気付いた。
知らぬ間に花粉が飛んでいるようである。
くしゃみをして鼻水を啜り、今年は去年と比べてどの位なのかについて考ようとするのだけれども、去年のことはこれっぽっちも覚えていない。

目が痒いことに気付いた。
知らぬ間に花粉が飛んでいるようである。
くしゃみをして鼻水を啜り、今年は去年と比べてどの位なのかについて考ようとするのだけれども、去年のことはこれっぽっちも覚えていない。

ある日、駅前の一角で人が寝ているのを見かけた。
スーツ姿の男がカバンを枕にして寝ている。それも一人じゃない。
良く地べたで寝られたものだ。と思いつつ、少し羨ましくもある。
”今すぐここで眠ってしまいたい”という強烈な睡魔に抗うことなく、恥も外聞も捨てて眠りに就くその寝入りばなの心地良さときたら、きっと何事にも代え難い幸福の瞬間なのではないかとさえ思える。
まぁ、やがて目を覚まして我に返ったときの後悔の念も相当なものになりそうではあるが。

僕のサイクリングコースから夕陽を臨むと、決まって網に捕獲されている。
富士山といい夕陽といい、こうもたやすく捕獲されるのはいかがなものか。

本当は分かっていたことだけれども、実際に雪が積もってみると、道を歩くのも大変で、あまり楽しくなかった。
しかも、通り過ぎた車に思いきりシャーベットをぶっかけられる始末。
お前なんかガス欠してしまえ。などとは決して思っていない。決して。
突然、空が明るく光り、轟音が響いた。雷である。
この季節、雪の降る中、車にぶっかけられたシャーベットまみれの僕が眺めた雷。
期待していたものと正反対の雪と場違いな雷。
現実は常に酷く滑稽だ。

夜、冷たい雨が降っていた。
僕は食料を買いに行かねばならず、自転車に乗っている。
さむい、さむい……
そういうリズムを刻みながら、リズムに合わせてペダルを漕いだ。
体が温まる頃には目的地に到着し、室内の暖かさと相まって少しだけ汗をかく。
そして、その汗が冷たく感じられる頃に、再び外へ出て冷たい雨に降られながらペダルを漕ぐ。
すごくさむい、すごくさむい……
行よりさらに寒いからそれをそのままリズムに乗せてペダルを漕ぐ。
朝、目が覚めて窓の外を見遣ると、外の景色は雨の日のそれだった。
僕は少し安堵し、けれども、何故かまだ残っているらしい童心が一面銀世界でないことを嘆いていることに気付く。
心の何処かで、非日常への憧れがある。
なぜそのような思考回路が働くのか皆目見当付かないが、心の中の何処かでそれを欲していることだけは分かる。

今夜は雪が降るとか降らないとか。
しかしまぁ、家に帰り、カーテンを閉め、エアコンをつけて風呂に入り、酒を飲みながら明日の起床時間と夜更かしをしたい欲求とのせめぎ合いの中で酔っぱらっていると、雪が降ろうが降るまいがさほど変わりはなかったりする。

毎日寒いですね。
えぇ、とても。

仕事が忙しくて昼食を摂れず、その分夕食をたらふく喰ってやると特大の広島風お好み焼き的料理を作成してみたものの、想定外に特大であったため食べることがある種の修行のような状態となってしまい、今はただただ深く反省している。もう一口も食べられません。

寒さのせいか風邪をひいたせいかはたまた酒の飲み過ぎか。
僕は頭が痛く、鼻が詰まっていた。
キーボードで今日の日付を入力したつもりであったが、西暦を2011としていることに気付く。
それから、カレンダーのある方を見た。けれども、そこにはカレンダーなどない。
年明けと共にカレンダーの位置を変えたのだ。しかし、体が勝手に旧カレンダーの位置を見てしまう。
物事を大きく変えようとすると無理が出る。
体がそれに付いてきてくれないからだ。
そして体が慣れた頃には2013が来ているのだろう。
常に時は無常だ。

少し飲み過ぎたようで、体の節々が疼く。
帰りの山手線で眠ってしまい、目が覚めたら駅に到着していた。
慌てて飛び降りたものの、目的の駅の一つ前であった。
そのまま同じ車両に戻るのも気恥ずかしかったので、一両ずらして再び乗り込む。
聞いていた音楽はいつの間にか終了していた。

目的地に10分前に到着したため、公園のベンチに座ってひなたぼっこをして過ごした。
何もせずに過ごす穏やかな時間も悪くない。

強い風が吹いている。
驚くほど 空気が冷たい。
僕は帽子を深くかぶり直し、上着のジッパーを目一杯まで上げて首をすぼめた。
今夜は冷えそうだ。

初詣の際におみくじを引いたところ、「健康:日頃注意せよ」と書いてあった。
それを見た僕は、「なんてざっくりとしたお告げだろうか」と半ば呆れ、特に気に留めることもなくその日を過ごした。
翌日、起床後に雨戸を開けていたところで事件は起こる。
寝ぼけていたのか油断したのか。僕は右手の人差し指を雨戸におもいきり挟んでしまい、朝っぱらから流血の惨事となってしまった。
爪の間からあふれ出てくる血を眺めていると、ふと、「日頃注意せよ」のお告げが頭をよぎる。
それにしても、人差し指の先っぽを怪我しただけであるにも関わらず、いざそこを庇いながら生活してみると案外不便なもので、しかも様々な場面で傷口が何かとぶつかり、その度に痛い思いをする羽目となっていた。
そうやって夕方になって、さらに事件は起きる。
僕はあろう事か、朝と全く同じ箇所を別の扉で挟んでしまったのである。
怪我をしている人差し指を庇い、普段と異なる指でドアノブを持ったのが原因であった。人差し指を伸ばしたまま扉を閉めたせいである。
これにはさすがに悶絶せざるを得なかった。
行き場のない怒りと痛みをを我慢する間じゅう、ずっと頭の中でこだまするあの言葉。
【日頃注意せよ】
何かの呪いにでも掛かったかのような恐ろしい何かを感じずにはいられない。
だから、僕はこの時誓った。
今年の抱負は「日頃注意せよ」にしようと。
そうやって決意も新たに迎えた翌日、やはり事件は起きる。
仕事場でコーヒーを飲もうとした時の事である。
僕はコーヒーの匂いが変であることに気付いた。気付いたけれども、まぁ何かの気のせいだろうと思い、一口飲んでみる。やはり味がおかしい。
スタッフに確認すると、どうやらポットを洗浄中であったらしく、薬剤入りのお湯だったのである。
僕は思いもよらない刺客に思わず、「これが”日頃注意せよ”の試練か」と、己の未熟さを思い知る。
どこに危険が潜んでいるか分からない。気を抜くことなく精進したいと思う。
日頃注意せよ。

木に電球が取り付けられていた。
それを一人の老人が眺めている。
僕もそれに倣って眺めてみる。
青白い光の粒がとても綺麗である。
けれどもよく見てみれば、木にとっては迷惑な代物だ。
そう思いその場を立ち去る。
老人は僕に気を取られることもなく、ずっとそれを眺めていた。

実家の猫は知らぬ間に大人びていました。
猫と共にこたつで新年を迎え、猫と共にひなたぼっこをしております。
本年もよろしくお願いします。

あとは実家に帰ってのんびり過ごすだけ。
良いお年をお迎えください。

自分の中で”年内に済ませておかなければならない事柄”というものがある。
会社の年賀状
冷蔵庫の中身
髪の毛
これだけはきちんとしないと年を越せない。
会社の年賀状は一昨日完成して無事送り出すことができている。
今日は美容室に行って髪の毛を切り、冷蔵庫の中身を整理しなければならなかった。
髪を切っている最中、美容師さんに「今日はこのあとどうするのか?」と問われ、「ホワイトソースを作る」と答えた。
美容師さんは驚いた様子でいるので、冷蔵庫に牛乳が余っており、明日には実家に帰ってしまうため、その前にどうにかしなければならない旨を説明すると、
「僕なら飲みますね」
という男気溢れる回答が帰ってくる。
僕もそうしようかと思ったのだけれども、ホワイトソースを作って冷凍しておく方が素敵であると思っていて、けれどもその素敵さについて上手に説明できる自信もなかったため、相槌を打つのみにしておいた。
家に帰ると早速作業に取りかかる。
とはいえ、大した作業ではない。材料を熱してひたすらかき混ぜておけばいい。
ぶくぶくと白い泡が出ては消えるのを眺めながら、僕はやはり今年一年のこととか来年のこととかを考えようとしていることに気付いた。
泡立て器を動かしていた右手が疲れたので、素早く左手に持ち替えて同じ動作を繰り返しながら、
「なんだかんだ言っても、遠巻きに見ればただの繰り返しだよな」
などと思う。

仕事納めである。
今年一年……いや、そういうのはやり飽きたのでもういい。
来年は……いや、そういうのもやり飽きたのでもういい。

横に流れる雲を目で追いかけながら、そういえば来年は辰年だなぁと思い出した。
夕闇に映る滑り台で親子が遊んでいる。
ふと、喉に違和感を感じ、軽く咳払いをしてみる。
風邪をひきそうな予感。
慌てて上着のボタンを締め直し、家路を急いだ。